家庭は子どもにとって一番身近な居場所。
家庭を子どもの安全基地にするために、どのような心掛けが大切なのか、立命館大学の安田裕子准教授と大阪教育大学の戸田有一教授の対談から、まとめてみました。
【手が出るのは、不安が強いから】
虐待というレベルまでいかなくとも、思わず子どもを厳しく叱ってしまうことは、少なからずあるかもしれません。
例えば、小学校低学年の子どもが、家でなかなか宿題をせず、授業の復習ができていなかったとします。 親は、このままではいけないと焦り、嫌がっている子を叱りつけてでも、勉強をさせることがあります。 親が不安で一杯になり、ついつい手が出てしまう事もあります。
幼い時は、力ずくで親の言うことを聞かせることができたかもしれませんが、子どもも成長していますので、いつまでもそんなことが続くわけがありません。 子どもは、勉強をやっているふりをしたり、力ずくで言うことを聞かせていると、力で反抗することを学んでしまいます。
【問い掛けの工夫で、やる気に】
勉強やお手伝いは、子ども自身も、やらなければいけないと、どこかで分かっているものです。
親から「やりなさい」と先に 言われて、一気にやる気が失せたという経験はありませんか。 そんな時は、例えば、「勉強する?それともお手伝いする?」とか、「今やる?後でやる?」といった問い掛けにするのも一つです。
親から言われたら、気をなくすけれども、自分で決めたならやれるものです。また、本人が選択して行動したときは、大げさに「頑張ったね!」「お母さん、すごく助かったわ」など、声掛けをしましょう。日頃からのコミュニケーションが、子どものやる気を高めます。
【大人の振る舞いを、まねる】
昔から世の中の一部に「口で言っても分からない子には、手を出してもいい」という考えが、浸透しているように感じますが、それは間違いです。
普段の人間関係で、言うことを聞いてくれないからと言って、友達や上司をたたいたら言うことを聞いてくれたなんてことはあり得ませんよね。 それなのになぜわが子にだけ、それが可能であると、どうして思うのでしょうか。
「子どもが大人の振る舞いをまねる」といったことに焦点をあてた行動心理学の実験があります。
ケガをして困っている人に援助する大人の様子が映し出されたビデオを見る子どもと、ケガをした人がいても援助をしない大人が映し出されたビデオを見る子どもと分けます。 実際にケガをした大人が来たときに、どのような行動をとるのか。
援助する大人のビデオを見ていた子どもは、ケガをした大人に「どうしたの?」と援助しようとしたのに対し、援助しない大人のビデオを見ていた子どもは、ケガをした人に気をとどめることなく、遊んでいた、という傾向が見られたそうです。
この実験からも、大人の振る舞いを見て、子どもは自分の行動を学んでいます。
しつけのために子どもに暴力を振るっていると、結果として子どもに「腹立たしい時は、相手に暴力を振るっていい」という考え方を伝えてしまっていると言えます。 大人の振る舞いが子どもにどれほど影響を与えているのか、深く自覚しておいたいものですね。
子育てに悩みは付き物です。
ついつい、子どもに手を出してしまったり、子育てがつらくなった時は、一人で悩まずに、誰かに相談しましょう。
児童相談所は、発達障害を含め、子育てに関する悩みを聞いてくれます。
専門家が対応しますので、迷わず、『189』に電話をしましょう!