共育コラム
2019年 12月 27日

12月21日(土)22日(日)に開催された「日本子ども虐待防止学会  第25回学術集会ひょうご大会」に行ってきました。

21日(土)開会式から参加し、一般社団法人 日本子ども虐待防止学会 奥山理事長の報告では、「子どもの権利を護る」2030年までに子どもに対する虐待・搾取を撲滅し、親子にやさしい社会を作ることが、体罰防止につながると言われていたことが、とても印象的でした。

特別講演では、「人と関わるロボットの研究」と題し、大阪大学特別教授の石黒浩氏による、取り組みが紹介されました。自分とそっくりのアンドロイドを作り、実験。皆さんもテレビで見たことがあるかと思いますが、マツコ・デラックスさんのアンドロイドや黒柳徹子さんのアンドロイドを製作した方です。

人と対話するのが苦手な人でも、ロボットであれば対話ができるという事例が沢山あり、実際に、遠隔操作で医者が、自閉症の子と対話をしたり、特別支援学校で、先生と児童の間で対話を支援する「ハグビー」や高齢者はしゃべらなくなるから認知症が進むので、対話サービスを行うロボット「テレノイド」を開発。

高齢者の方が日中一人になり、心配だからと、監視カメラを付けることもありますが、ロボットの方が抵抗がなく、安心感を与えていることなどが紹介されました。

しかし、いくらAIが発達しても、人間の脳には勝てないとのこと。例えば、人間の脳は、猫の写真を数枚見ただけで、猫と分かりますが、AIは、数千枚みないと認識しないそうです。また、人間の脳は、見ると聞くが同時にできる。このことに何だかほっとしました。

午後からは、数多くあるシンポジウム(90分)の中から、興味のある所に参加しました。

『今、改めて考える~市区町村の児童相談、児童虐待対応の現場において、心理職をどう活用するか?』

船橋市家庭児童相談室に勤務されていて、今は、江戸川区の子ども家庭支援センターで心理士スーパーバイザーの木野内さんの企画で、子どもの虐待死亡事件が連続して発生し児童相談体制の在り方が大きく問われている中、市区町村の「子ども家庭総合支援拠点」の設置が推進され、心理担当支援員が配置されることになったが、役割やあり方について、心理職の方から提案。

心理職といっても、常勤職員の場合は、他部署へ移動。非常勤や嘱託も含めて中心者になって、ネットワークを築くことが大切。

児童虐待対応現場で、家族に起きていることのアセスメントが必要だが、最も重要なのは、家庭訪問。家族の様子や室内の様子を確認することが大切。

質問コーナーでは、だれも手を挙げる人がいなかったため、思わず、手を挙げてしまいました。

船橋市では、来年1月に「子育て世代包括支援センター」がオープンし、心理職が配置されます。家庭児童相談室との関わりや「子ども家庭総合支援拠点」との違いや、心理職の関わり方を聞いたところ、船橋市の家庭児童相談室の心理職の方が来ていたため、木野内さんから指名され答えてくれました。

あの大勢の中で、偶然にも市役所の方に(2名)出会うことができ、感動しました。

『学校における課題発見のスクリーニング~発見から支援までのシステム構築~』

大阪府立大学人間社会システム科学研究科の山野さんの企画で、学校における児童生徒全員を対象にスクリーニングを行い、早期から支援の必要性を示す兆候を捉える試みを実践しています。

学校に上がる前には、乳幼児健診が行われますが、未受診者には、注意しなければなりません。大阪府では、保育園や幼稚園などどこにも所属していない、連絡がつかない場合、保健師が家庭訪問をします。居住実態がない場合は、家庭児童相談室に協力要請を行っています。中には海外居住もあるそうです。

家庭訪問をし、不在の時は「連絡が無ければ、家庭児童相談室と連絡を取ります」の不在メモを入れてくると、大抵が連絡をよこすそうです。工夫されているなと思いました。

学校では、スクリーニングシートを用いて、気になる子をピックアップして、適切な支援や対応をしていることが紹介されました。

このスクリーニングシートは今ある学校のデーターをまとめるもので「チーム学校」の一つにもなるとのこと。

子ども食堂や学習支援など、子どもの貧困対策が行われていますが、担任から紹介されていない現状がある。

また、大東市教育委員の水野さんも発表者の一員で、2016年度から、小1の保護者を対象とした全戸訪問型の家庭教育支援事業の報告がありました。この家庭訪問は、先生が行うのではなく、地域の訪問支援員が訪問するのだそうです。

保健・福祉・教育の縦割りを超えた包括的な仕組みで行われていることに、興味がわきました。

終了後、スクリーニングシートについて山野さんと名刺交換をしました。なんと、柏市で取り組んでいることが分かりましたので、柏市に聞いてみようと思います。

『母子生活支援施設におけるアセスメントのあり方の検討~ソーシャルワーク実践事例集作成プロセスから~』

大阪市立大学大学院生活科学研究科の中島さんの企画で、母子生活支援施設における、支援の要となるアセスメントに焦点をあて、実践事例集をもとに、報告がありました。

母子生活支援施設は以前は母子寮と言われていました。様々な状況を抱えた母子が、安定した生活が送れるように見守り支援しています。

ここでのまとめでは、公的サービスをいくら増やしても、孤独感は取り除けない。

子どもは、どのような母親であっても大好き、しかし、母親は、子どもが好きでない人もいる。

母と子の支援とは、経済的な支援は勿論だが、心の自立を目指している。リスクの判断が必要。

ここでは、社会福祉法人千葉ベタニヤホームの方も、発表されていました。船橋市でお世話になっている施設です。

終わった後に、名刺交換をさせていただきました。

以前の母子寮を建て替え移転しましたが、土地は船橋市の物で、民設民営の施設ですが、しっかりと連携が取れている事にホットしました。

22日は、8時40分からスタート。

『NICU(新生児集中治療室)での心理臨床~親子関係の始まりの場にいる心理士がいる意味』

千葉市立海浜病院 新生児科 周産期心理士ネットワークの藤嶋さんの企画で、NICUでの心理臨床を通して、危機的な状況にある親子が少しづつ関係を育てていく中で、心理臨床のあり方を紹介。

NICUは、船橋市にもあり、何度か足を運んでいます。医師や看護師さんからの話を何回となく聞いていましたが、お母さんの本音を事細かく聞いたことがなかったので、とてもショックでした。

厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」によると、愛着形成が十分に行われない。乳児期の児・未熟児・障害児など産後うつになりやすい。

こころのケアが大切で、親子のプロセスを守り支えるためには、親の内的プロセスを支えることが重要。

赤ちゃんが生きる事を支える→親が子と出会い関係を育てる→新しい家族が家族として育っていく

親子の傍らに誰かがそっと「いる」こと、赤ちゃんの成長を誰かが共有していること⇒親子の育ちを守り、虐待を防ぐ

周産期で生まれたお子さんを育てているママ達から、様々な相談を受けていますが、成長した段階での相談であったため、生まれてすぐの状況や内面的な事は分からずにいましたので、話を聞き、医療的な事は専門家に任せ、何かあったら遠慮なく相談できるように、暖かく見守っていきたいと、改めて実感しました。

『一時保護中の子どもの意見表明権~100人の子どもの声を通じて見えてきたもの~』

岡山弁護士会の石倉さんの企画で、弁護士の方が、児童相談所と連携し、一時保護の子ども達から直接話を聞いている様子を伺いました。

憲法第11条では、国民は全ての基本的人権の享有は妨げられない事。子どもの権利条約第12条1項に、子どもの意見表明権が確保されている事。これらの事から、弁護士として、このような取り組みを始めたそうです。

一時保護所は、子どもにとって、駆け込み寺であり、児童相談所は支援の始まりである。安全・安心・快適でなければならない。なぜならば、親の同意は不要で、学校に登校ができない、外出ができない等の制約があるため。

不満が無い、しょうがない、家には帰りたくない、祖父母の家に帰りたいが親は許さない等、なぜそうなのか。言葉の裏にある意味をもっと考える必要がある。

例えば、性的虐待があった時、家には戻りたくないと、本音。

*弁護士が名刺を渡すと、一人の人間として見てもらえたと、とても大事にしている。

*理由が納得できないルールを見直してほしい。

*自分に関心を持つ大人が今までいなかった。

*子どもは、自分の意見を持っていて、きちんと言える場が必要。

最後に、今後の課題として

*大人に選ばれている子・子どもが主体となっていない→弁護士が常勤ではないため、大人側の日時・場所が決められてしまい、その場にいた子どものみとなってしまう。

*弁護士は大人相手なので、子どもと話すスキルが身についていない。

*子どもの権利について、きちんと伝えられるのは、弁護士。

船橋市では児童相談所を設置するために研究が続いています。私も、弁護士の配置を要望していますが、常勤でいつでも、子ども達と話ができる体制が必要と感じました。

『子どもの声を聴くために何が必要か 子どもの権利と司法面接』

くれたけ法律事務所の一場さんが企画で、神奈川県立こども医療センター小児科医・NPO法人神奈川子ども支援センターつなっぐの代表、田上さんから、アメリカでの取り組みが紹介されました。

日本の今の課題

*虐待死が絶えない事への対応

*性虐待への対応

*子どもの死の検証と予防

司法面接とは、虐待、特に性虐待を受けたことが疑われる子ども本人から、被害事実内容を確認する手法。録画した内容が証拠として認められれば、面接は1回で済み、その内容も変遷しないが、日本ではまだ法的に整備されていない。面接が誘導にならないように、また確実な情報が得られるように、面接官は事前に十分な研修を受けておく必要がある。

イメージは、面接室は1対1で、子どもに予め説明をして録画をする。

バックスタッフ(多職種チーム)は、別室でモニターを通して、面接をモニタリングしながら、必要なアドバイスや修正をする。

バックスタッフには、警察、検察、医師、弁護士、児童相談所など今後個別に聞かなくても良いように、情報を共有し、不足する情報は、メモ等で面接者に知らせる。

バックスタッフ支援が必要なのは、人は、話を繰り返すうちに、内容が変化していくため。

神奈川子ども支援センターつなっぐでは、多機関連携により、苦しむ子どもたちを救うサポート体制がとられています。

このようなセンターが各地にできる事を望みます。

『虐待を受けた子どもの入所施設における10代への自立支援に~各施設の心理職によるグループワーク実践から学ぶ』

児童自立支援施設の樋口さんが企画し、児童養護施設・児童自立支援施設・自立援助ホームの方から、実践例の報告がありました。

児童養護施設は、保護者のいない児童・虐待されている児童などで、なかには、集団生活に不適切な行動パターンを身に付けている子どもも少なくありません。

ここでの報告では、グループセラピーを導入し、実施されている報告がありました。

児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童や家庭環境その他の環境上の理由で生活指導を要する児童などで、昨今、入所してくる子どもたちの約6割が被虐待児だそうです。

自立援助ホームは、主に15歳~22歳までの生き場のない若者たちを対象に、生活・就労支援を行っています。15歳以降に虐待家庭から一時保護されたり、児童養護施設等を退所した若者達で、年齢的にも生き場がないのが現状。

入所して、長くても2年での自立を強いられるため、社会にでてからこけてしまう。

ここでの課題は、

*これまでの育ちの修正、安心できる「依存対象」をこれからどうするのか。

*自立のための「経済的基盤」をどうするのか。

*これから「現実的な未来」をどうするのか。

*「具体的な暮らし」をどのように支援するのか。

将来の方向の確認や課題への相談、フォローアップ体制が重要。

様々なシンポジウムが開催され、全ての課題に挑戦できませんでしたが、2日間を通して、多くの職種の方が、児童虐待に対し取り組んでいること。また、行政と連携を取りながら、支援していくことなど、とても勉強になりました。

船橋市では、児童相談所の設置に向けて取り組んでいますが、そろそろ、児童家庭課だけで研究するのではなく、関係部署が横断的に設置に向けてプロジェクトチームを作るなりして、進めて欲しいものです。次回以降の議会で提案しようと思います。

また、絶対に児童虐待を起こしてはいけません。親のケアや子どもに対しても、本音で話せる場所が必要です。

私は、心理士などの資格は一切ありませんが、どうしたら、子どもたちの、そして親の悲鳴を聞いてあげられるか、自分なりに勉強したことを役立てて今後の活動に活かしていきます。