ある児童精神科医が、多くの非行少年たちと出会う中で「反省以前の子供」が沢山いるという事実に気づき、少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすらできない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じである。困っている彼らを学校・社会生活で困らないようにすることが重要。といった内容の「ケーキを切れない非行少年たち」という本を読みました。ここでいう非行少年とは、少女も含みます
この中で、子ども達が発しているサインとして、
1、集団行動ができない
2、忘れ物が多い
3、集中できない
4、勉強のやる気がない
5、やりたくないことをしない
6、嘘をつく
7、人のせいにする
8、じっと座っていられない
9、自信がない
10、先生の注意を聞けない
11、その場に応じた対応ができない
12、嫌なことから逃げる
13、漢字がなかなか覚えられない
14、計算が苦手 などです
サインの出し始めは、大体小学2年生位から少しずつ見え始めるようになります。
他にも、勉強についていけない、遅刻が多い、宿題をしてこない、友達に手を挙げる、万引きをする、なども見られます。
これらの背景には、知的障害や発達障害といったその子に固有の問題や、家庭内での不適切養育や虐待といった環境の問題があったりします。
しかし、逆に友達から馬鹿にされ、いじめにあったり、親や先生からは「手がかかるどうしようもない子だ」と思われたりして、単に問題児として扱われてしまい、その背景に気づかれず、結果として問題が深刻化していると言うケースもあります。
障害を持った非行少年たちは、出院後は社会で真面目に働きたいと言う気持ちを持っています。
そこで支援者は、「では仕事を探して紹介してあげれば良いと」非行に理解のある会社などを探して仕事を紹介するのですが、たいていは1ヵ月、長く続いても3ヶ月位で仕事を辞めます。
やる気はあるのですが就労しても続けられないのです。
職がなければお金もない。それでも遊びたい気持ちはあるので、簡単にお金が手に入る窃盗等につながったりするのです。
またこれらの兆候が小学校で見逃されたまま、中学生になると、対応がますます困難になっていきます。
中学になると思春期に入り、それだけでも不安 定なのですが、定期テスト、先輩・後輩の関係、クラブ活動、異性との関係など、これまでと大きく変わった環境の中で子どもにとっては大きなストレスがかかります。
親に対しても、依存しながら反発する点を繰り返しつつも、しっかり受け止められていれば次第に安定していきます。
しかし、支援が必要な子供たちは、これらの変化に自分で対応していく事はとても困難です。
そこでかなりのストレスを感じてしまうのです。
そうすると、まず学校に来なくなります。
学校に来てもエネルギーを持て余しているので、教師に暴力を振るう、物を壊す、不良仲間とつるむ、夜間徘徊する、タバコを吸う、自転車を盗む、といった不良行為や問題行動を繰り返すので、学校ではお手上げになっていきます。
こうなると後は警察に補導されたり、逮捕されたりすることにつながっていくのです。
ですから、そうなる前の小学生のうちに、いかに早くサインをキャッチして対応するかが大切なのです。
低学年のうちから、学校でのつまづきをキャッチし、その子にあった支援が必要だと思います。
単なる学習支援だけではなく、何故問題行動をおこすのか、考え寄り添うことが大切だと思います。
ある先人の教育者の教えに「教育は教えるものではなく学ばせるものである。学び方を指導するのである。背負って川を渡るのではなく、手を引いて川を渡らせるのである。」「要は魂と魂との接触でなくてはならない。否、共鳴でなくてはならない」とあります。
如何にして社会生活を営むのか、社会に出る前の最も重要な場所である学校で、子ども達の声を聴き、学習面だけではなく心の面も手を引いて、導いていただきたいと思います。